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Discovery Report     ―旅のある生活― 



渡嘉敷島  ―眩しい時間が流れる島 #2 ―

 その日の晩、「せっかくだから日の出とか見たいねぇ」などと前の晩にマー坊と話していたのだけれ ど、結局起きたのは8時過ぎ。太陽はだいぶ前に昇ってしまっていたのだが、とにかく朝の散歩をする。 近所の商店で朝食のパンを買ってブラブラ。「んー。なんかいいねぇ、この島。もう一泊する?」 そんなノリでもう一泊することにした。
今回の旅では、基本的にノープラン。宿も全く予約せず、航空券だけ買って沖縄までやってきた。 行った先々で宿を見つけて移動を続ける。予定はたてずに現地の情報とフィーリングを頼りに放浪する。 全然いい宿が見つからない時もあるけれど、行き先が全部決まっているパッケージツアーよりも自由に 行き先を決められるのがいい。私が旅をするのはいつもこの方法だ。

 さて、長めの散歩を終えて宿に戻ったころ、港から今日13時頃、ホエールウォッチングの 船が出るという情報を入手。早速港に行くことに。バスのおばちゃんに電話をして、迎えに来てもらう。 電話をして迎えにきてもらう、という辺りは完全にタクシーなのだが、料金は片道一人250円と決まって いるれっきとしたバスなのである。
この日のおばちゃんは大忙しのようで、かなりカッ飛ばして港へ走る。なんでも、この日の昼12時から 息子の小学校の卒業式があるらしい。「今から帰って子供に洋服着せて学校まで送って・・・ あー忙しい ね、今日は」と。
 この島の小学校は我々が滞在している阿波連の集落以外にも港の集落にもひとつあって、そちらの方の 卒業式は先週終わった、とのこと。というのも、島のふたつの小学校が同じ日に卒業式をすると、 市長が片方しか出られなくなるので、1週間ずらしているらしい。なんだかあったかい話のような気がする。

 さて、ホエールウォッチングだが、この日はどこかの小学校の修学旅行の団体が来てい て、大型フェリーがウォッチング船として出動するとのことで、我々はそれに便乗させてもら うことになる。
鯨なんて、滅多に遭遇できるわけはないだろうと思っていたのだが、意外や意外。出航し て30分ほどで遠くに鯨の潮吹きが見えた。なんでも、この辺りは春先あたりになると、ザトウクジラが来て 付近の海を回遊するので、大抵は遭遇できるらしい。
 潮吹きが遠くに見えただけで小学生たちは大興奮。ギャーギャー騒ぎながらパシャパシャ と写真を撮りまくっていた。学校から支給されていたのか、みんな同じ使い捨てカメラ。デジカメを持って いる人はひとりもいない。遥か遠くに見える潮吹きを(おそらく広角だと思われる)使い捨てカメラで ”ギリギリギリ、パシャ!”と手動のフィルムを巻いては撮り、巻いては撮り、している。 よっぽど「あのね、君たち。あんなに遠くのものをそんな広角のカメラで撮っても、現像 したら全然見えないよ」と言ってあげたかったのだが、とにかくみんな大興奮で、ギリギリギリ、 パシャ、ギリギリギリ、パシャ、を繰り返している。
きっと家に帰って、現像された写真を見て愕然とすることだろう。ただひたすら水平線の 写真ばっかりなのだから。「みんなそうやって大人になって行くんだろうね」なんていいながら、 小学生たちの微笑ましい姿をマー坊とふたりで笑いながら眺めていた。

 肝心のホエールウォッチングはというと、最終的に鯨の3〜400mほどまで近づいて行くことができた。 それほど間近、という程ではないにしろ、意外に近くで見れたことに驚き。
それにしても面白かったのが小学生ウォッチング。港までの復路に「あ〜、オレ27枚中25枚 を鯨に使ってしまった」と嘆いている子もいる。そうそう。子供にはこの無邪気さが必要なのだ。 すぐ写真を確認したり簡単に消したりできるデジカメではなく、現像までに時間がかかるフィルム カメラこそ彼らに与えるべきなのだ。いや、意地悪な意味ではなく、あくまでも彼らの勉強のために。 今も”ギリギリ、パシャ!”の音が耳から離れない。

 ところで、この島は人口700人ほどなのだそう。そして私が滞在している集落はそのうち300人。 なので、住民同士みんな知り合いで、噂が広まるのも早い。
今朝、宿の人に「やっぱりもう一泊します」と言ったら、昼ごろにはその噂が広まっていて、タクシーの 運転手のおばちゃんに「あんたら、もう一泊するらしいねぇ。ゆっくりしていきなー」と言われた。こういう地域の和がなかなか素敵。

 宿に帰った後は昼寝をしたり、シュノーケルで海に潜ったりのんびりとした時間を過ごす。 せっかく旅に来たのに、あくせく観光名所を回ったり忙しくするよりも、こうしてのんび りと過ごす時間が素敵だ。「何もしない」のではなく「何もしないこと」をするのだ。

夜、近くの居酒屋で晩飯を食べてふらふら帰っていると、公民館のようなところで住人が集まってガヤガヤ騒いでいた。 きいてみると、今日の卒業式の祝賀会をやっているとのこと。 大人も子供もみんな集まって泡盛やらジュースやらを飲んでいて楽しそう。 先輩の中学生が卒業生に「中学校はとても楽しいところなので楽しみにしていて下さい」とか、言葉を贈っている。
この島は本当に暖かい。「よかったら一緒に入って楽しんでいってね」と言われたのだけれど、さすがにそれは 遠慮しておいた。
自分がこの島の住民でないことに、ちょっとやるせない気持ちを感じた夜だ。










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